動力車についてもUIC番号標準化
客車は1922年からRICの規格にもとづき各国の車両が相互に乗り入れ可能でしたが、動力車についてはDBの線路の上を走るのは主にDBの動力車でした。しかしオープンアクセスの拡充でDB以外にも多数の鉄道事業者が参入したことにより、各社でまちまちだった番号体系を一元管理する必要性が増してきました。


このため、2007年1月より、車両番号体系の管理が、ドイツ鉄道から連邦鉄道庁 (EBA: Eisenbahn-Bundesamt) に移管されました。これに伴い、客車・貨車以外の車両(機関車・電車・気動車など)についても、12桁の「UIC番号」が標準化されることとなりました。ここでは、このUIC番号の標準化をもってEpoche VIに入ったと考えます。

私はBR111やBm234といった呼び方に慣れてきていたので、UIC番号にはまだ馴染めていません。
鉄道の状況
高速新線やトンネルとICE
高速新線の建設
2022年夏現在のNeubaustrecke(高速新線)の建設状況です。StuttgartからUlmのトンネルによる高速新線が建設中です。
赤:NBS(300km/h) 黄:NBS(250~280km/h) 青:ABS(200~230km/h)

Stuttgart21 街と駅の大改造
2010年から、賛否両論の渦巻く中で、Stuttgartでは都市改造も兼ねた大規模な駅の改造工事が開始されました。こちらもLindauと同じで、方向転換をともなう頭端駅の使いにくさが最大の理由です。Stuttgartでは既存の駅の真下に90°ずらして地下ホームを建設するという大胆な改造が進行中です(2022年11月現在)。完成時には、上の高速新線の地図で黄色い点線で示されている、StuttgartとUlmの間が250-280km/hの全線トンネルのNBSで結ばれることになるようです。ただ、こういった莫大なコストのかかる公共工事(特にStuttgartは戦後から「古い町並みを捨てる」というやり方が続いています)は反対運動が根強く、工事開始から10年が経ちますが今でも反対デモが続いています。

私にとっては、ヨーロッパの頭端駅というのは長距離旅行のロマンを感じる場所だったのですが…
従来の頭端式ホームと駅舎の間を直角に掘って地下式に改造する工事です。有名なMercedes Benzのマークの載った塔の右側は解体され、地下工事が進められています。駅舎からホームまで仮の空中廊下が作られています。
Embed from Getty Images渡り鳥ラインの運行休止
HamburgからデンマークのKøbenhavnへ向かう、Hamburg-Lübeck-Puttgarden-Rødby Nykøbing Falster-Københavnのルートはちょうど渡り鳥の飛行コースと重なり「Vogelfluglinie(渡り鳥ライン)」と呼ばれていましたが、残念ながら2019年12月で運行休止になりました。


このルートでは、Fehmarn島のPuttgardenから対岸のデンマーク側Rødbyまで列車ごとフェリーに乗るという旅行好きには魅力的な体験があったのです。
デンマークの国会でPuttgardenからRødbyの間にプレキャストコンクリートのトンネルを沈埋する案が承認され、デンマーク側の資金により鉄道・自動車共用のトンネル Fehmarnbelt-Querung が作られることになり、工事を待たずに魅力的な体験は終了してしまいました。
当面Københavnに向かうには、西寄りの陸上ルート(Hamburg-Flensburg-Kolding-Odense- København)を利用することになります。こちらは距離的には遠回りですが、列車をフェリーに乗せる手間をがない分、高速で列車を走らせられ、所要時間はフェリー利用の4時間50分よりむしろ短縮されています。
航送での安全性を考慮して前面を巨大なゴムで覆った、特徴あるデンマークのInterCity車両がこのコースで見られなくなったのは残念です。
Zürich-Lindau-Münchenの国際ルートの改良
2008年ころからスイスとドイツの間で、Zürich-Lindau-Münchenのルートを電化し、高速で到達できるようにするプランが話し合われ、以下の方針が決まりました。
- BayernとWürttenbergの旧国家間の軋轢によって生まれた、観光的には価値があるがスピードを出しにくいKempten経由の単線非電化のAllgäuルートは使用しない
- HergatzからMemmingenに至るBaden-Württenberg州を通る区間を経由しBuchloeとつながる複線区間(上の路線図のMünchenから左に大きく伸びるグレイのライン)を電化してスイス・オーストリア・ドイツ各国で使える仕様の高速列車を走らせる
- Zürich-München間の高速列車はLindauの島の旧市街にある頭端駅を使用しない。近くの旧貨物駅Lindau Rautinを国際急行用の旅客駅に改装し、2.の路線に直接乗り入れるための約1kmの曲線(Aeschacher Kurve)を電化し高速で通過するため防音壁などを作る
さまざまな利害調整のプロセスが10年以上つづき、2020年にようやくインフラが整い、振り子機構を持ったRaBe503(PendolinoのETR610)を用いて時速160km運転をすることにより、従来5時間かかっていたZürich-Lindau-München間を3時間半で接続することができるようになりました。
複数電源方式の電気機関車
ADtranz-Bombardier Transportation系列のTRAXX
TRAXX3(2011~)


TRAXX3のBR187は2種のAC電源(15kV16.7Hz, 25kV 50Hz)版です。さらに追加のディーゼルエンジンで非電化のラスト1マイルを60km/hで走れるようにしました。機関車の側壁は平面ではなく、安価で同じ強度の垂直ビード側壁です。ここにターポリンに印刷された広告をとりつける仕様になっており、従来のラッピングより広告対応のコストダウンができるようになりました。これは、三相誘導電動機になり側面に換気口が不要になったので機関車のボディにラッピング広告もできるようになったEpoche Vから、広告を通じてマネタイズするのを前提に機関車を設計するEpoche VIに時代が変化したのを象徴するような構造の変化だと感じます。また以前のTRAXXよりもフロントが個性的な顔立ちになりました。
SIEMENSの次世代機 Vectron

IGBTを使ったインバータ式でVVVFで三相誘導電動機を動かします。電源方式は交流15 kV16 2/3Hz、交流25 kV50 Hz、直流3000 Vと直流1500 Vもしくはディーゼル発電です。パンタグラフがつながっている電気系統は共通ですが、各国のパンタグラフへの要求仕様が異なるためそれに対応するパンタグラフを4種類まで搭載できます。2010年に試作機が作られ、欧州各国で試験されたうえ、2020年には各国で800両以上が利用されています。
Epoche VIの機関車生産
以前は電気方式の違いが障壁となり、各国で個性ある機関車が開発されましたが、今や巨大企業二社がヨーロッパ中の国や鉄道会社から受注を受けて機関車を生産するようになりました。

ドイツだけで仕様がまちまちの機関車が200種類以上あった時代を生きたWagnerが見たらどう感じるでしょうか…
InterCityの客車もDoppelstockwagenに


Epoch III, Epoch IVのDRの項目でも触れたように、WUMAGはEpoch IIIから二階建て客車を開発してきました。
1997年にDeutshce Wagoonbau AG(元のWUMAG)は、Bombardier Transportationの傘下に入っています。
ドイツのInterCityは上階の揺れの問題を嫌ってか、NarveherkerやRegioでは導入していた2階建て車両の導入に及び腰でした。
その点、こだわりのないスイスSBBでは20年以上前のBahn2000計画で独自のDoppelstockwagenを導入しています。これは2階側を優先して1階側車端には機械室を置いており、Wagenübergangが2階部分についています(にもかかわらず、スイスの運用では当然のように普通のEW IV客車とBahn 2000のDoppelstockwagenが混結されていたりするのがおもしろいです)。
DBでも2014年、ついにInterCityでも2階建て客車を導入しました。Twindexx varioとかIntercity2 という名前で呼ばれています。1950年代、Görlitzの直線的で不細工だった箱型連接Doppelstockwagenの系譜が進化して、ついにここまで来たかと思います。
BRAWA(1:87) Märklin(langenmastarb 1:93.5)から模型が発売されてます。
なお、DBではその後2020年にはスイスSBBでKISSと呼ばれていたStadlerの2階建て電車のドイツ版を購入し、これもIntercity2として利用しています。
地域の鉄道の状況
Silberlingの退役
Silberling(n-Wagen)は、ものによってはかなり内装が更新され、Epoche VにVehrkersrotに塗り替えられましたが、低いプラットホームからドアの下の階段を2段上がって車内に入るという基本動作を旅客に強いることは変えようがありませんでした。Epoche IIIからEpoche Vまでおよそ50年地域の足として使い続けられてきたSilberlingは、バリアフリー化の要請を受けて低床式のディーゼルカーや電車にその地位を譲りました。
低床式電車の登場と普及


Bombardier Transportationが開発したBR442(愛称はTalent 2)は床下機器を屋根上にあげてバリアフリーを実現しました。先頭車以外の窓のラインの高さが下がっています。
ポーランド PESAのディーゼルカーLiNK


私が個人的に注目しているのがポーランドの車両メーカーPESAです。ディーゼルカーLiNKはアグレッシブな先頭デザインや独特のバリアフリー構造、モダンな車内デザインを持ち、納期遵守の堅実な生産で評価されています。ポーランド・チェコだけでなくDBでもBR632(2両ユニット)、BR633(3両ユニット)として用いられるようになりました。ALSTOMやSIEMENSとは違った個性を新しい時代の欧州鉄道にもたらすのを期待しています。
S-Bahn
都市のS-Bahnも Epoch VIになりすっかり Vehrkersrotに変わりましたが、電気機関車と同様に車両の側面をマネタイズに利用する戦略で、車体側面はすっかり広告で埋められることになりました。右のBR423はもはやVehrkersrotなのは先頭車前面だけです。


車両製造会社の状況
BombardierがALSTOMに
電気機関車ではTRAXX、客車では旧Deutsche Waggonbau AGのDoppelstockwagenを擁してきたBombardier Transportationは2021年、フランスの世界最大の鉄道車両メーカーALSTOMに吸収されました。
Bombardier Transportationの鉄道車両部門をめぐる動き
1997年に Bombardier TransportationがDeutsche Waggonbau AG(もとのWUMAG) を吸収合併
2001年に Bombardier TransportationがADTRANZ(もとのHenschellを含む) を吸収合併
2021年にフランスのALSTOMが、Bombardier Transportationを吸収合併。
たしかにWagnerの時代には機関車メーカーは多すぎ、車両のバリエーションも多すぎたとは思いますが、私にとってはEpoch IVくらいに各地のメーカーが分散していたくらいがちょうどいいような気がします。資本の論理なのかもしれませんが、今のように業界の強者(ここではALSTOM) がなんでも買収して傘下にいれてしまうのがいいのか、ちょっと疑問に思います。どこへいっても同じ形の電車が走っているようになってしまうのはつまらないので、ポーランドのPESAのようなメーカーに期待しています。
オープンアクセスと車両の色
Epoche Vでドイツでは多くの車両がVerkhersrotに塗り替えられ、皆真っ赤な状況になりましたが、その後オープンアクセスにより各地の鉄道業者の独自のカラーリングの電車が見られるようになったこと、電気機関車についてはリース会社の機関車の普及や側面広告の浸透により、Epoche VIでは再び車両にいろいろな色が戻ってきています。
DBが抱えている問題
サービスレベルの低下
以前のドイツ鉄道は誇りある鉄道員が運営していたというイメージがありますが、すべてにおいてコストがカットされる現代、必ずしも顧客サービスが満足なものではなくなっているようです。何十年か前にはドイツの鉄道は本数も多いしダイヤも正確だと思ってた(私が1990年代に使ったときはそうだった)のですが…
遅れる、暑い、寒い、汚い…. Wise Guysというアカペラ・グループからその名も”Deutsche Bahn”という、こんな歌がリリースされ、それなりの共感を持って受け止められているようです。
重大事故が多い
残念なことに、ドイツでは近年、列車同士の正面衝突事故が多発しています。
2011年1月29日、中部のHordorfで、濃霧の中で貨物列車と旅客列車が正面衝突し、10名が死亡しました。
Embed from Getty Images2016年2月9日のBad aiblingで正面衝突事故(10名死亡)
2022年6月3日Garmisch-Partenkirchenでの脱線転覆事故(5名死亡)はまだ記憶に新しいです。
上記は旅客列車が巻き込まれ海外でも報道された重大なものですが、鉄道雑誌の片隅に載る貨物列車の事故や操車場での移動中の事故を含めると、数ヶ月に一度は起こっています。また、機関車と客車が明確に分けられていた当時は機関車でのみ発生した電気系統の発火事故などが、乗客が乗る車両でも発生するようになりました。
これからの鉄道
かつて鉄道は国営があたりまえで、当然のように戦争の道具にもなっていました。敷設や開発時のコストは長期の営業により回収すればよいということになっていました。しかし現在、鉄道経営は合理性が求められ、以前は安全のために余剰にかけられていたコストが削られつつあります。とくにドイツでは、以前は周囲の国よりも整備が行き届いていて時刻も正確だったのに、いまではイタリアや東欧よりもドイツのほうが整備が悪く時間が不正確になってきている、と言われるようになってしまいました。今後、経済合理性と顧客サービスや安全性のバランスを維持できるのか、安全性を維持していけるのか、それともどこかにしわ寄せをしないとそもそも事業継続ができないものなのか、関心を持って見守っていきたいと思っています。


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